【話が噛み合わない原因】具体と抽象
「具体と抽象」 著者:細谷功
久しぶりに、読んで考えさせられる本を読んだ。
人と話していて、(あれ?全然会話が噛み合わないぞ)という経験は誰にでもあるはずだ。その場合に考えられることはいくつかあるが、その中の一つとして、【具体で話す人】と【抽象で話す人】という原因が考えられる。
【抽象】とは、例えば大まかにカテゴリを分けたものの総称だ。
「マグロ」というのは「魚」というカテゴリに所属している。この場合は「魚」が【抽象】で「マグロ」が【具体】だ。【具体】はさらに細分化することが出来る。「マグロ」の中にも「キハダマグロ」や「本マグロ」などがあり、それはさらに具体的に表される。
しかし、【抽象】や【具体】は、比較の相手によって変動する。「生物」というカテゴリの中では「魚」は【具体】になる。ピラミッドのような関係だ。
抽象の世界で話す人の話は、具体の世界で話す人には通じない。逆に、具体で話す人のことは、抽象で話す人にとっては「話の論点がずれている」と感じる。
抽象は、総合的に見たり、全体像を想像しないと捉えることができない。木を見て森を見ず、とは全体を把握できずに具体のみを見ている状態だ。
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以前こんな話をしてくれた人の話を思い出した。
「部下が、指示したことをその通りしか出来ない。応用が利かない。AをA’に直して、と伝えたらそれしか出来ない。もしかしたらBはB’に直すべきなのかもしれないという発想が出来ない。」
この部下は、一つ一つの仕事を「具体」と捉えているのだろう。全体を上から把握して、仕事を総合的に見ているオーナー側からすると、「何でそんなことも想像出来ないの?」となる。
哲学などは、まさに抽象の世界。大きな枠でざっくりと定義した言葉で表す。
「〇〇の場合は当てはまらないんじゃないんですか?」と具体例を出してくる人は、ざっくりとしたイメージが湧かず、具体的なパターンでしか捉えられないということなのだろう。
抽象で捉えることが得意な人は、仕事の方針など、大きな矢印を創ることに向いているという。具体で捉えることが得意な人は、数や数値が決められた作業などが向いているようだ。
マニュアル化、というと【具体派】の人にとっては仕事がしやすいのかもしれない。この場合はこうする、この場合はこうする、というのが逐一決められている状態。
【抽象派】の人にとっては、本質的な方向だけが定められている仕事の方が能力を発揮出来るのではないかと思う。
接客で言えば、マニュアルがなくても、例えば「お客さんの喜びを一番に考えるという理念」などをきちんと理解していれば、その時々でベストの対応をする「おもてなし」ということにつながる。
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【抽象】は、人間のみが把握することが出来る概念なのだそうだ。
抽象で捉える力を持つことは、生きやすさにつながるのかもしれない。そして(話が噛み合わない)と思った相手がいたら、自分とは別の視点で物事を視ている人がいるということを知っておくと、余計な苛立たしさやもどかしさを感じずに済むのではないか、と思う。
なんだか話の噛み合わない人がいる、と思ったら読んでみると面白いかもしれないです。
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コメント9件
細谷さんの地頭力の通信教育を受けてました。
この話も結局はそういうことにつながるような気がします。
なるほどと考えさせられました。分かっているつもりでも、言葉に表すと、気付かされました。仲間に教えたり、指導したりしても、そのことだけではないよ!と言っても応用されません。熱意とか創意があるのかないのか、疑問に思うことがしばしば。視点を変えることも重要ですね。ありがとうございます。
今年上の方に仕事を教えてるのですがそれがまさに具体に当てはまる方でなんか納得しました!
人それぞれ個性があるのでそれにあった関わり方を考えるのも大事なのかも知れないですね(´∀`*)
「”具体派”の応用が効かない」
「”抽象派”の説明が足りない」
ということはありがちですが、
お互い反対のことは苦手だったりもするので、
(両方できるという人が一番信用できない(笑))
自分が苦手を克服できないとしても、
「自分が苦手なことをやってくれてる」
と思う余裕を持つことが大事ですね。
話は変わりますが、
手書きメモの写真は床の上で撮影?
気持ちよさそうな床だなぁ(^^)