ちっちゃい戦友が出来た旅、東京旅行①
そうだ、東京行こう。
そう決めたのは2週間前。横浜のカフェで働いていた時の友達、何人かと連絡を取っていた時だった。その中の1人の子が年明けには九州に行ってしまうということで、もしかしたら全員で会えるのは最後になるかもしれない、と。急に【行かなきゃ!】という気持ちが突き動かされた。
旦那さんに許可を取る前に「行くわ!」と手が勝手にメッセージを送っていた。
息子は連れて行けばいい。なんとかなる。
その時点ではさほど心配もしていなかった。授乳期間を終えた息子は、わりとなんでも食べられる。東京ならば、どこにいてもすぐに食べ物を手に入れることはできる。ベビーカーもある。困ったら助けを求めればいい。大丈夫。
と、まあ簡単に考えていた。
のちに、「ポキッ」という心が折れる音を聞くことになるとは思いもしなかった。
行きの新幹線での息子は、かなりのご機嫌だった。持ってきたおにぎりとお茶を飲んで、席で絵本をニコニコ眺め、席を通る人に手を振っていた。彼にとっては、新幹線だけではなく電車も初めての体験だ。そして、静岡あたりでストンと眠りの中へ。
(なーんだ、余裕じゃん)
品川で降りて、ホテルにチェックインし、友達と合流した。そこでもみんなにかまってもらってニコニコしていた。6人全員で集まるのは4年ぶり?とかそれくらい。みんな環境は変わっていながらも、変わらない笑顔でなんだかほっとした。
ミッション1、カフェバイトの友達に会いに行く。クリアだ。
みんなと別れて、夜ご飯を食べるために駅のあたりや近くのお店を見に行った。ベビーカーで入れるようなゆったりしたお店はなく、土曜の夜とあってどのお店も賑わっていた。東京は、いつもそうだ。なんだか、ギュギュギュっとしていて落ち着くお店を探すことが困難だ。
本当はあるのかもしれないけれど、下調べしないタイプだから見つけられない。1人の時はなんとかなっていたけど、子連れとなると話は別だ。
なんとなくどのお店も店内には入りにくいなあ〜と感じたので、通りにあったオープンテラスのイタリアンバル・デルソーレに入ることにした。
(本当はホテルの部屋でテイクアウトの食事でもよかったのだけれど、どうしても美味しいビールが1杯飲みたかった。どうしても、どうしても…)
デルソーレは食事が摂れるイメージはなく、エスプレッソを中心とするイタリア系のカフェだと思っていた。しかし、その店舗ではディナーも出していた。すごく、すごく、ほっとした。
そこの店員さんが、きっとすごく出来るバリスタさんなのだと思うのだけれど、息子にもよくしてくれた。居心地の悪さをまったく感じずに食事をすることが出来た。バリスタさんに救われた気がした。この時点で「やっぱりバリスタっていいなあ」と再確認した。
少しだけ飲んで、早めにホテルに退散し、早めに寝かしつけた後に、のんびりと持ってきた本を読んだ。すごく、リラックスできた宿泊だった。
東京旅行、二日目
今日のミッションは、まずは有楽町でお店を開いている友人に誕生日祝いを渡すこと。
朝から、しとしとと雨が降っていたため、つむつむ君は抱っこ紐で抱っこし、傘を差し、その他の荷物をベビーカーに乗せビニールカバーをかけて移動することにした。重い、が仕方がない。荷物を全部もつよりは8キロの息子の方が軽い気がした。
品川から有楽町へは山手線で1本。エレベーターを探すのにもだいぶ慣れた。
有楽町のドイツパンとコーヒーの移動しない移動カフェは、相変わらず元気に営業していた。立地は最高の場所なのだけれど、なんせお店を年中無休で営業しなければならない、という約束らしい。その場所で7年間、毎日彼女は営業していた。すごい。すごすぎる…。すごいを通り越してもはや変態だ。
でも、久しぶりの笑顔を見れて、なんだかほっとした。「来るなら言ってよ〜!」と、毎回突然来る私に苦言を呈していた。
私は、いつも友達のお店に行く時に連絡しない。もし、万が一、本人が居なくってもいいか、と思っている。もちろん会いたいし、そのために行くのだけれど。でも、会えなかったとしても、その人が元気に生きている痕跡が感じられればそれでいい。その人がいつも身を置いている空気を感じられればそれでいいのだ。
なるべく、気を使わせないように、と思ってそうしているのだけれど、自由に計画を変えられるように身軽に行きたいという自分の都合もある。約束に縛られたくない性格は、こんなところにも顔を出しているようだ。
これでミッション2、お誕生日祝いを渡す、もクリア。
そこから、メトロを乗り継ぎ、千葉県の行徳に向かった。ここには、1年前にカフェを開いた友達がいる。カフェニルは今回どうしても行きたかった場所の一つだ。
彼女は、カフェの専門学校のクラスメイトだった。20歳だった当時から、28歳でカフェを開く計画を立てていた。
そのために、エスプレッソの勉強をとillyで働き、フードの勉強をと別のお店にステップアップのための転職をし、新規オープンの立ち上げを経験するために幾つかのお店で働いていた。
そして、数年前から珈琲焙煎のネットショップを始め、実店舗を開いた。それも、子どもを産んで1年ほどでお店をオープンさせたのだ。なんともパワフル。
「20歳の時の彼女はカフェを開く夢を見ていて、それが叶った」わけではなかった。
「将来、カフェをしたいんだ〜」という希望を持っていたわけではなかった。
あれは「夢」ではなく「計画」だったのだ。
そのために必要な勉強やスキルを逆算して学び、コツコツと何年も前から計画を温めていた。叶った、という他力を思わせるニュアンスとは少し違う。そこに向かって進んできた。つまり、必然なのだ。
そして、お店のオープンが目的でもないはずだ。もっともっと先を見つめている。
ここに着いた時、彼女の顔を見て泣きそうになったのを、息子の顔を見て必死にごまかした。
日曜の午後、ひっきりなしにやってくるお客さんの顔を見て、愛されているお店であるということがひしひしと伝わってきた。ここに来てよかった。そう思った。
ミッション3、「1周年おめでとう!」と言いに行く。クリア。
これで今回の旅行、すべてのミッションは達成した。
このまま東京駅まで行き、帰りの新幹線に乗ればよかったものの(あれ?もしかしてもう一つ行きたいところ行けるのでは?)という心の声が聞こえてしまったために、下北沢に向かってしまっていた。我ながら、なんとも私らしい判断だった。呆れるほど私らしい判断だった。
コメントを残す