ちっちゃい戦友が出来た旅、東京旅行②

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①の続き

下北沢の本屋さん

「まだ4時。もうちょい行ける!」そう判断した私は、もう一つ(行けたら行きたい)と思っていた場所に向かうことにした。

下北沢のB&Bという本屋さんだった。

なぜそこに行きたかったのかというと、少し前に買った本「これからの本屋読本」や、お勧めしてもらって読んだ「本の逆襲 」「本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本」の著者、内沼晋太郎さんのやっているお店だったからだ。

本屋さんにあまり興味がない人からすると【本屋さんはどこもそんなに変わらない】と思うかもしれないけれど、本屋さんってすごくいろんなタイプがある。

いろんなカフェがあるように、いろんな本屋さんがある。

ベストセラーを扱っている、大型の本屋さんばかりが本屋さんではない。そういうわけで、個性的な本屋さんとして知られているB&Bはどうしても行ってみたい場所の一つだった。

そのため、予定変更。東西線から千代田線に乗り換えることにした。東西線から千代田線に乗り換えるには、大手町という駅で乗り換えだ。1回だけの乗り換えで下北沢まで行ける。そんなに難しいことじゃない。

大手町につき、乗り換えの移動を急いだ。

よくわからなかったので、駅員さんに「エレベーターの場所」を聞き教えてもらった。少し前方には、同じくベビーカーを押した夫婦がいた。

(この後をついていけば、行けそうだな)と判断し、のんきに後ろをついて行った。発車まで、あと3分。間に合いそうだ。息子は抱っこ紐の中でスヤスヤ寝ていた。

その時、目の前に、30段くらいの下り階段が出てきた。どこを見渡してもエレベーターはない。そういえばさっき「千代田線への乗り換えは、段差があります」と、書いてあったような気がする…

いや、でも。それはさっきベビーカーを持ち上げて登った10段くらいのことだと思っていた。あれはダミーだったのか!

 

前の夫婦はどうするんだろう…?と思って見ていたら、ママが赤ちゃんを抱っこし、パパがベビーカーを持ち上げて難なく下り階段を降りて行ってしまった。

まじか。まじか。まじか。その手があったのね。

私は、今1人だ。いや、正確には2人なのだけれど。ベビーカーにてんこもりの荷物をのせて、お腹に抱っこしながらこの階段は、さすがにちょっと無理。しかし、ここで引き返すとなると、さっきふぅふぅ言いながら、ベビーカーを持ち上げて登った10段を降りることになる。結局、どっちにしても降りなくてはいけない。

オワタ\(^o^)/

その時に「ポキッ」と心の中で音がした。ような気がした。

 

このポキっという音がを聞いたのは、10年ぶりだと思う。初めて東京に1人で行った時に、新宿で迷子になった時だ。その時はスマホのマップも全然正確じゃなくて「新宿駅西口バス乗り場」からバスに乗らないといけないのに、まったくたどり着けなかったのだ。

散々迷って歩いた挙句、駅員さんに聞くことにした。「西口のバス乗り場に行きたいのですが…」その時の駅員さんは面倒くさそうに「あっちにいって聞いて」と言った。その時、何かが心の中で「ポキッ」といった。

今思えば、あの新宿駅構内を、田舎から出てきた人に口頭で伝えるのは難しすぎる、ということが分かる。だから、せめて近くまで行ってからそこにいる人に聞いた方が分かりやすいよ、という意味なのだと理解出来る。

でも、その時は、何だかすごく悲しかったのだ。「東京って本当に冷たいんだ…」と泣きたい気持ちになった。いや、実際ちょっと泣いたと思う。

その時は結局、何回もいろんな人に聞いてなんとかなった(のだと思うけど、正直あんまり覚えていない。)

 

あぁ…どうしようかな。早足にどんどん人が過ぎていく。きっとみんな急いでいるに違いない。ここで声をかけて止めてしまうのもなんだか申し訳ない。

人の流れが落ち着いたところで、離れた場所にいた駅員さんにお願いすることにした。結局、乗り換えの電車には間に合わなかった。

 

なにはともあれ、下北沢につくことが出来た。B&Bは、予想外にも地下のお店だった。ベビーカーごとお店に入る手段はなかった。仕方がない、と邪魔にならないところにベビーカーを置いていくことにした。(スミマセン…)

必死の形相で乗り継いで来た本屋さんは、それはそれは素敵なところだった。店内の本の、9割くらい見たことないタイトルの本だった。本屋さんに来たら、サーっとタイトルは眺めてそれとなく記憶に残すようにしている。だから、9割が見たことない本というのはすごいことだ。

ベストセラーや誰もが知る名作ではない本ばかりだった。もしくは、他の本屋さんでは目につかないような場所に配置されている本が、棚のメインに並んでいたのかもしれない。

なんだこれは。なんだこれは。なんだこれは。

 

店内を一通りじっくりと見て回りたい衝動に駆られた。何時間でもいられる気がした。

 

しかし、気持ちとは裏腹に、滞在10分でリミットがきた。抱っこ紐でくくりつけられていた息子が暴れ出したのだ。というのも、朝の8時からずーっと抱っこされているのだから、致し方ない。彼にしてみたら、正常な判断と言える。

普段は「ママ抱っこ♡」タイプの彼でも、いい加減に鬱陶しくなってきたに違いない。

「離せー!この野郎ー!」と言わんばかりに暴れている。

 

本屋さんで、これはまずい。相当まずい。

 

泣く泣く店内を後にした。そして、絶対にまた来ることを心に誓った。

 

そうと決まれば、退散!とばかりに家路に急ぐことにした。ギュウギュウの満員電車に揺られ、渋谷駅の乗り換えですこし迷い、スクランブル交差点を上から見てギョッとし、なんとか品川までたどり着いた。

怒り狂っている彼をおにぎりでなだめて、新幹線を待った。

新幹線に乗ると、ようやく解放された彼は「いやっほう!!!!!」とばかりに、今度は稀に見るハイテンションになってしまった。疲れが通り越した時におこる、ナチュラルハイというやつかもしれない。

怒り狂っているのも困るけど、ハイテンションでキャーキャー騒ぐのも車内では耐え難い。このままでは、車両にいられない。落ち着けるために、一度、新幹線の車両の接続部分に出ることにした。

とはいえ、地面に野放しにしておくこともできないし、手で抱っこしているのにも限界がある。再び抱っこ紐で抱っこするしかない。そう思って抱っこ紐に入れたのだけれど、この判断が甘かった。昨日と今日の疲れが爆発したのか、窮屈なストレス空間に逆戻りになるのを察知したのか、これまで見たことないような大惨事(大泣き)になってしまった。

…完全に、オワタ\(^o^)/

結局、眠るまで約2時間立ったまま抱っこで堪えることにした。思わず、だっこしながら何度かしゃがみこんでしまった。もう、肩も足も限界だった。

やっと寝付けた寝顔を見ながら、ようやく席に戻ってひと息ついた。

 

今回、彼にとっては何もかもが初めてだった。初めての電車。初めての新幹線。初めての人混み。初めての強制抱っこ。初めての犬とのふれあい。知らない人にこんなに会うのも初めてだった。朝食のバイキングも、バケットにカポナータをつけて食べるのも初めてだった。

 

彼は、この二日間すごく頑張ってくれた。そして、私も、すっごく頑張った!(私は自分の欲のために、だけれど。)

「う~ん」と伸びをして、再び起きた彼がなんだかたくましく見えた。

その顔を見ていたら、一緒に一つのことを成し遂げたような達成感を感じた。都会で一緒に戦った戦友のような気がした。ちっちゃい、戦友。一緒にがんばった仲間。

【かつて住んでいた場所に行く】なんていうのは、はたから見たら、旅でもなんでもないのかもしれないけど。2人で行った東京は、これまでとはまったく違った景色に見えた。

これは、間違いなく『旅』だった。

だけど、もし、また行くことがあれば、次回はぜひとも家族3人で行きたい。急に階段が出現しても、ヒョイっと持ち上げて何事もなかったような顔で進めるように。大暴れしても、交代で抱っこできるように。ビールを飲みながら、美味しいねーと言えるように。

息子との絆が深まったのと同時に、日頃の旦那さんへのありがたさが身にしみた旅だった。

 

それにしても、東京はすごい所だ。道に迷っても、心が折れても、終電に乗り遅れても【なんとかなる】ということを、いつだって教えてくれる。道に迷わなければ【迷っても大丈夫】ということを知ることはできないのだ。困難がなければ、困難を乗り越える経験は出来ないのだ。

 

そんなことを、これでもか!というほど教えてくれる東京は、やっぱりすごい。

 

終わってみれば、最高にいい旅だった。今度の東京は、戦友の彼がもう少し大きくなったときに。長々とお付き合いただきありがとうございました。ナカジマノゾミでした。

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2018年09月08日 | Posted in ブログ, 子連れさんぽ, 暮らしと子育て | | 4 Comments » 

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コメント4件

  • ヒロヤス より:

    ちっちゃな戦友との戦友記とても面白く読ませてもらいました〜(≧∇≦*)笑
    なんかその情景が目に浮かぶくらい臨場感がありました!!!

    • nonnon より:

      ヒロヤスさん

      割となんでもないことを、引っ張って大げさに書いてみました\(^o^)/
      そう言ってもらえると、嬉しいです♪また、なんでもないことを大げさに書くの巻やろうっと♪笑

  • シゲちゃん より:

    終盤のつむつむくんの暴動が目に浮かぶようでした(*^^*)・・・つい、読みながら(笑、笑)
    そりゃつむつむくんにしてみれば、大層苦痛だったろうに。
    でも、ノンちゃんの東京の友達に久しぶりに会いに行こう、という気持ちはよ〜く分かります(*^^*)
    いずれにせよ、元気に無事帰って来れて良かったですね〜(*^^*)

    • nonnon より:

      シゲちゃんさん

      まさに、つむつむの暴動でした。
      私でも、1日中お腹に押し付けられたら暴れますね。いくら大好きな人と、でも。笑
      いや〜本当に無事で何より♪そして、子連れ旅行に無理は禁物ということもよーく分かりました♪よかったよかった〜!

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