大量の本の行方
本屋さんのはなし
12月から本屋さんでアルバイトをしている。かれこれ、もうすぐ4ヶ月になる。
初めはお店の掃除や本の整頓くらいしか出来なかったものの、だいぶできる作業が増えてきた。レジの操作、入荷した商品をチェックすること、コミックの中が読まれないように透明のカバーをかけること、防犯用のタグをいれること、注文してくれた人に入荷の案内電話をすること。
まだまだ分からないことが多いけれど、とりあえず1/3人前くらいにはなれたような気がする。
そんな本屋さんの仕事の中で、疑問が多いのが自動配本と返品の仕組みだ。
自動配本と返品
本屋さんには、書店が注文しなくても自動的に本の卸業者みたいなところから毎日新刊が送られてくる。勝手に大量の本を送ってきて、その分を伝票で請求してくるのだ。(普通のお店だったらありえないような仕組み)
本はどんどん送られてくるのだけれど、本屋さんのスペースにも限界がある。だから「売れる見込みのないもの」「売れなかったもの」「お店のテイストと合わないもの」などは、書店員が判断し、返品する。
すると、返品した分の代金が返金されるという仕組みになっている。
だから、バックルームには【今月の返品目標〇〇箱!】みたいな、不思議な張り紙があったりする。とにかく、たくさん返品しなければ、仕入金額が大変なことになってしまうのだ。
この時点で、いろいろと無駄も発生する。本を送る、戻す、という運賃。そして、検品したり、売れる状態にカバーをかけたりするアルバイトの人件費。
雑誌などの付録は、今では当たり前のように【良いもの】がついていたりするのだけれど、これは返品をする際に破棄することになっている。売れ残れば、大量に制作し大量に破棄することになる。
そして、そもそも返品した本。これがどこに行くのか気になって社員さんに聞いてみた。すると、卸業者さんに戻ったあとに、出版社さんに戻り、在庫などになるのではないか、とのことだった。
でも、そもそもお店で「売れそうにない、げんに売れなかった」と判断して返品しているのだから、全国の書店から同じように返品されてくれば、出版社がそんなにその本の在庫をもつ意味もない。つまり、在庫が多すぎれば裁断されて、処分されるのである。
本の種類が多すぎる
今は、雑誌も書籍も、種類がありすぎる。毎日新刊が200冊くらい出版されているらしい。その冊数が、少し減れば、、、と思うのだけれど、本が売れなくなり、どんどん新刊を出さないと出版社の売上数が減り、存続が危機的な状況だからやむおえずどんどん新刊をつくっている、という事らしい。
1店舗ならまだしも、全国規模ではどれくらいの資源をつかっているのだろう。考えると、ぞっとする。
今は、こういった自動配本や返品といったルートにのせない「リトルプレス」なども増えてきているけれど、まだまだ少数派だ。
本はやっぱり紙が好きなのだけれど、こういった資源の観点からみたり、本が届くまでの速さのことを考えると、電子書籍が活躍するのもわかるような気がしてしまう。
本屋さんの仕事は、もちろん楽しいのだけれど、すこし複雑な気持ちになる。
【本を出版する】というのは、目的ではなく手段だったはずだ。世に伝えたいことを伝えたり、人の生活をちょっと豊かにする手段。いつのまにかそれが生き残るための手段、になっているのかもしれない。
出版社さんが【生き残る為に本を出す】のではなく、【いい本を世に出したい】という本来の理由で本をつくれるような仕組みが出来たらいいなあ、、と思う。
本が売れない時代だからこそ、本来の目的を思い出さないといけないような気がする。本屋さんも、出版社も。ナカジマノゾミでした。
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コメント4件
私も学生時代、本屋とCD屋が一緒になった店で働いていたので疑問を持ったことがあります。人口ボーナス期はこの仕組でもなんとかまわっていたのでしょうが、人口オーナス期になった今、このビジネスモデルでは立ち行かなくなることは明らかです。
みんなで重い腰を上げて、早いうちに正しい方向へ導かないとAmazonしか残らなくなるような気がします。
のんちゃん、こんにちは。
私は書店で働いた経験はないですが、同級生に書店の子だったり、弟たちが学生時代にアルバイトをしていたりして、自動配本と返品のことは知っていました。
のんちゃんがこの仕組みに気付いてもやもやした思いをするのいつ来るのか、いつ来るのかと。
やっぱり、きましたね(笑)
でも、のんちゃんがポジティブに本屋さんが本屋さんとしてあり続けるような仕組みができればと思っているようで安心です。
とてもいい記事があつまる雑誌の出版社がいきなり倒産したり、いいものを作っていてもままならい現状が本にある事を単なる本を買う人である私も感じています。
業界の裏側を知っても、本好きでありたいものです。
では、”ね”